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【補足】6-1 末梢神経系

神経細胞が集合した組織を神経系といい、中枢神経系と末梢神経系に大別できる。

中枢神経系:脳と脊髄からなる

末梢神経系:末梢の各機関と中枢神経系を結ぶ役割を果たしている

 

末梢神経系は、自律神経体性神経に分けられる。

 

自律神経は、無意識的に働き、呼吸・循環・体温・消化など、生命活動の維持に関わっている。

さらに、自律神経は、主にアクセルの役割を果たす交感神経と、主にブレーキの役割を果たす副交感神経からなる。

 

体性神経は、感覚神経と運動神経からなる。

感覚神経は、末梢の感覚受容器でとらえた感覚情報を脳に伝えている。

運動神経は、運動指令を末梢の骨格筋などへ伝えている。

 

これらの神経は、命令を伝える向きによって分類される。

中枢から末梢へ、中心から遠くへと命令を伝えるのが、遠心性神経であり、自律神経と運動神経が該当する。

末梢から中枢へ、中心へと向かって命令を伝えるのが、求心性神経であり、感覚神経がこれに該当する。

末梢神経系の刺激伝達を示している。

※神経と刺激伝達物質の組み合わせを理解する※

 

運動神経

中枢から直接神経細胞が末梢へ伸びている。

神経終末から、アセチルコリンが放出され、骨格筋にあるニコチン受容体がその刺激を受け取っている。(骨格筋にあるニコチン受容体は、NM型である)

 

自律神経

自立神経は、脊髄から神経細胞が出て、途中の神経節で、別の神経細胞に中継して、各器官に到達する。

神経節の前の神経を、節前神経という。

神経節の後の神経を、節後神経という。

 

交感神経

交感神経は、節前神経の神経終末では、アセチルコリンが放出され、節後神経の神経細胞にあるニコチン受容体(NN型)が受け取る。

交感神経の節後神経では、神経終末からノルアドレナリンが放出され、それぞれの標的臓器にあるアドレナリン受容体が受け取る。アドレナリン受容体には、αとβの2種類がある。それは、さらに細かく分けられており、α1, α2, β1, β2, β3 がある。

 

副交感神経

副交感神経の節前神経では、神経終末からアセチルコリンが放出され、節後神経のニコチン受容体(NN 型)が受け取る。さらに、節後神経では、神経終末からアセチルコリンが放出され、全身の標的臓器にあるムスカリン受容体(M型)が受け取っている。ムスカリン受容体には、M1, M2, M3 の種類がある。

 

自律神経系をまとめておく。

アセチルコリン

 運動神経・・・ニコチン受容体(NM)(“ニコチン(N)”受容体の“マッスル(M)”型)

 交感神経の節前神経・・・ニコチン受容体(NN)(“ニコチン(N)”受容体の“ニューロン(N)”型)

 副交感神経の節前神経・・・ニコチン受容体(NN

 副交感神経の節後神経・・・ムスカリン受容体(NN

 

ノルアドレナリン

 交感神経の節後神経・・・アドレナリン受容体(α, β)

 

臓器ごとに、どの種類の受容体があるかが決まっている

薬物によって、受容体の選択性が異なる

→これで薬の効果が決まってくる

 

ーーー

(例外)汗腺

交感神経:節前神経・節後神経ともに、神経伝達物質として、アセチルコリンを放出している

自律神経系の基本原則

 

自立性支配

無意識的に制御している

 

二重支配

一つの標的器官は、交感神経と副交感神経の両方で支配されている

ーーー

(例外)瞳孔:逆の働きをする筋肉を、交感神経・副交感神経がそれぞれ調節している

ーーー

 

拮抗支配

交感神経と副交感神経は、逆の作用をもたらす

(片方がオンで、もう片方がオフのスイッチ)

交感神経

交感神経系の働きは、“闘争か逃走か”という言葉で表されるように、体を動かすように仕向ける。

交感神経を刺激すると、以下のような反応が全身で引き起こされる。

瞳孔:散瞳 ・・・光を入れて、物を見るイメージ

気管支平滑筋:拡張 ・・・動くには、酸素を取り込まなければならない

心臓:心拍数増加・心収縮力増強 ・・・動くためには心臓を動かして、血液を流す

膀胱:蓄尿 ・・・動くので排尿している暇はない

末梢血管:収縮 ・・・血液を送る  (というイメージ)

 

副交感神経

副交感神経の働きは、“休養と栄養”をとるのに適した状態に仕向ける。

副交感神経を刺激すると、全身で、以下のような反応が起こる。

瞳孔:縮瞳 ・・・交感神経の逆

唾液:漿液性のサラサラの唾液 ・・・リラックスしてヨダレたら〜のイメージ

心臓:心拍数減少・心収縮力減弱 ・・・交感神経の逆

消化管:活発 ・・・副交感神経は“栄養”

 胃酸分泌:増加

 蠕動運動:促進

膀胱:排尿

末梢血管:拡張

神経細胞で情報がどのように伝わるか

①神経細胞内・・・刺激伝導

細胞内外は、イオンチャネルの働きで、細胞内は K+ が多い、細胞外には Na+ が多い状態が保たれている。何らかの刺激でイオンチャネルが開くことで、活動電位が生まれる。

この活動電位が電気刺激として、伝わる(刺激伝導)。

 

②シナプス・・・情報伝達

神経細胞内では電気刺激として刺激伝導が行われる。

刺激が神経終末に到達すると、連結している次の神経に情報を伝達するためには、神経伝達物質が重要な役割を果たしている。

 

神経終末に刺激が伝わると、シナプス小胞に蓄えられている神経伝達物質が、シナプス間隙に放出される。放出された神経伝達物質は、次の神経細胞の細胞体にある受容体に結合する。その後、細胞反応が起こり、情報が伝わる。

その後、不要になった神経伝達物質は、酵素で分解される、または、神経終末のトランスポーターから回収し、シナプス小胞に蓄えられ、再利用される(再取り込み)。

 

生体内に存在しており、受容体に結合する物質を、「リガンド」という。

 

ポイント

・シナプスでの情報伝達には、神経伝達物質が必要

・神経終末からシナプス後膜への一方向の刺激伝達である

薬物はどのように作用しているのか

◯神経の作用を強める

[1] 受容体作動薬

受容体に結合して、リガンドが結合した時のような細胞内反応を引き起こす

 

[3] 分解酵素阻害薬

神経伝達物質の分解を阻害することで、神経伝達物質の作用を強める

 

[5] 再取り込み阻害薬

トランスポーターによる再取り込みを阻害することで、シナプス間隙の神経伝達物質を増やす(減らない)ため、神経伝達物質の作用を強めることができる

 

放出促進

シナプス小胞からの神経伝達物質の放出を促進する

◯神経の作用を弱める

 

[2] 受容体遮断薬

受容体に結合することで、リガンドの結合を阻害するため、リガンドの働きを阻害する

 

[6] 自己受容体作動薬

α2 受容体や5-HT1A 受容体のように、神経終末に存在する受容体には、受容体に結合することで、神経伝達物質の放出を抑制している受容体がある。この場合、自己受容体に結合することで、神経伝達物質の作用を抑制する。