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検査前の指導の意味

眼底検査

「眼底検査を受ける日は、自分で車を運転して来ないでください」

 

◯原因薬物:散瞳薬

散瞳薬として用いられる薬は下記のような薬がある。

・副交感神経抑制薬:トロピカミド(ミドリンM点眼 等)

・副交感神経遮断薬:アトロピン

・α1 受容体刺激薬:フェニレフリン(ネオシネジン点眼)

 

散瞳薬を点眼すると、

・瞳孔が拡大(散瞳)し、多くの光が網膜に届くため、視野がまぶしくなる

・調節麻痺が起こり、遠方にピントを合わせようとしている状態のため、手元がぼやける(α1刺激薬では起こらない)

・隅角が狭くなり、急性閉塞隅角緑内障発作を起こす可能性がある

しかも、視野の異常は、点眼後4〜6時間は続く。

 

そのため、以下の事項を確認する。

・眼底検査を受ける日は、自動車を運転して来院しない、かつ、検査後も、自動車運転など危険な機械作業の予定を入れない

緑内障(および、緑内障の既往歴)がないかを、事前に確認しておく

 

関連項目)

解説のページ「眼/末梢神経による調節

胃内視鏡検査

☆検査前に既往歴を確認する

 

◯検査前の注意事項

・検査前夜、または、当日朝からの絶食

 

◯前投薬

(1) 鎮痙剤・・・腸管の蠕動運動が観察の妨げになる場合があるので、消化管の運動を抑える薬を検査前に注射する

 (a) ブチルスコポラミン

 (作用機序)副交感神経遮断作用(抗コリン作用):鎮痙作用、胃液分泌抑制作用

 【禁忌】・・・☆事前に既往歴を確認する

 ・出血性大腸炎・・細菌性下痢症では蠕動運動抑制により毒素が排出できないため、症状の悪化や治療期間の延長をきたす

 ・閉塞隅角緑内障・・抗コリン薬の作用で、眼圧が上昇し、症状が悪化する

 ・前立腺肥大による排尿障害がある・・抗コリン薬の作用で、膀胱をゆるめ、尿道を収縮させるため、尿がさらに出にくくなる

 ・重篤な心疾患・・抗コリン薬の作用で、心拍数が増加し、心臓に過剰な負荷がかかる

 ・麻痺性イレウス・・抗コリン薬の作用で、消化管運動が抑制されるので、症状が悪化する

 【副作用症状】・・・☆副作用症状が出ることがあるが、しばらくすると収まる

 ・抗コリン作用

   ・口渇・・・「口がカラカラすることがあります」

   ・視調節障害・・・「手元がぼやけて見づらいことがあります」

 

 (b) グルカゴン

 (作用機序)平滑筋に直接作用して、消化管の蠕動運動を抑制する

  ※インスリンに拮抗して血糖を上昇させる作用もあるが、消化管の蠕動運動を抑制する作用もあるため、鎮痙剤として用いられる。

 禁忌疾患のため、ブチルスコポラミンが使えない場合に、グルカゴンが用いられる。ただし、糖尿病には禁忌

 

 (c) l-メントール(ミンクリア)

 (作用機序)カルシウムチャンネルに結合して、筋肉を弛緩させ、蠕動運動を抑制する

 内視鏡検査の時に、胃内に散布して使用する

  

(2) 消泡剤

 ・ジメチコン(ガスコン)

 (作用機序)気泡の表面張力を低下させ、消泡作用を示す →内視鏡検査時の視認性を上げるため

 

(3) 鎮静剤

 (使用目的)検査の不安やストレスを和らげる

 ・ミダゾラム

 ・ジアゼパム

 ・フルニトラゼパム

 ※メリット・デメリットを鑑みて、施設によって、鎮静剤を使うか使わないかの方針は異なる

 デメリット・・・過鎮静:血圧が下がる、呼吸が弱くなる、検査当日は自動車運転等の危険な機械作業はできない

 

(4) 局所麻酔薬

 ・リドカイン(キシロカイン)・・・ゼリー or スプレー

 (使用目的)一時的に神経を麻痺させ、痛みを感じなくする

 【副作用】

 ・アナフィラキシー

   リドカインはアナフィラキシー頻度が比較的高い薬(1/100000)

   ☆使用後の様子を観察する

    初期症状:違和感がないか、皮膚症状(蕁麻疹、発赤等)、腹部症状(腹痛、悪心・嘔吐)、呼吸器症状(呼吸困難、咳)など