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108回 看国試 A096

(連問の3問目)A さん(37 歳、女性、会社員) 右乳癌と診断

 

Aさんは、乳房温存療法を希望したが、腫瘤が大きいため手術前に化学療法を受けることになった。術前化学療法としてEC療法(エピルビシン、シクロホスファミド)を3週ごとに、4サイクル受ける予定である。

 

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Aさんは、職場の上司と相談し、仕事を継続しながら化学療法を受けることになった。2サイクル目の治療のため、化学療法センターに来院した。Aさんは「1回目の治療のあと、数日間身体がだるくて食欲もなく、体重が1キロ減りました。仕事も休みました」と看護師に話した。

 

身体所見:体温36.8℃、呼吸数16/分、脈拍70/分、血圧120/74mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度SpO298%

 

検査所見:赤血球400万/μL、Hb 12.5g/dL、Ht 37%、白血球2,300/μL(好中球55%、単球5%、好酸球4%、好塩基球1%、リンパ球35%)、血小板18万/μL、総蛋白7.0g/dL、アルブミン4.5 g/dL、尿素窒素13mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、CRP 0.3mg/dL。

 

2サイクル目の化学療法を受けたAさんに行ってもらうセルフモニタリングで最も重要なのはどれか。

 

 

1.脈拍数

2.体 温

3.血 圧

4.体 重

 

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2. 体温

〔解説〕
1.脈拍数
アンスラサイクリン系化学療法薬は、心毒性がある。(エピルビシンが該当。(参考)ドキソルビシンも同様に心毒性に注意) 症例では、現在のところ脈拍数は正常であるため、最重要項目ではない。

2.体 温
検査値から、白血球が減少していることがわかる。化学療法により骨髄抑制が起こっていると考えられる。特に、好中球が減少しているときに発熱すると、急速に重症化する危険性が高いため、迅速な対応が必要となる(抗菌薬投与)。徴候を見逃さないためにも、セルフモニタリング項目として、「体温」が重要である。

3.血 圧
アンスラサイクリン系化学療法薬は、心毒性がある。症例では、現在のところ血圧は正常であるため、最重要項目ではない。
抗がん剤のなかで、特に高血圧の副作用に注意が必要な薬に、血管新生阻害薬やマルチキナーゼ阻害薬がある。

4.体 重
乳がんのケアにおいては、特に、リンパ節郭清や放射線治療などの合併症として起こるリンパ浮腫の把握のために体重把握は重要である。その他、心毒性があるため、心不全徴候を知るためにも体重のモニタリングは必要であるが、現在のところ正常値であり、最重要項目ではない。