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【補足】5-5 抗リウマチ薬

関節リウマチ

関節リウマチとは、自己免疫機序によって起こり、慢性的な関節炎を主病変とする。

つまり、自らを攻撃するため、滑膜の炎症が起こり、そのうちに、軟骨・骨破壊が進行し、関節破壊に至る。

以前は抗炎症薬しかなかったが、近年、抗リウマチ薬の開発が進んでいる。

 

抗リウマチ薬は、関節リウマチの疾患活動性を調節する薬である。

疾患修飾性抗リウマチ薬として、DMARD と総称される。

 

進行を調節する薬であって、治療薬ではないため、このような言い方がされる。

しかし、以前に比べると、骨破壊を食い止め、寛解(症状が抑えられた状態)が期待できるようになってきた。

 

抗リウマチ薬

抗リウマチ薬の分類にはいくつかあるが、日本リウマチ学会のガイドラインでは、ヨーロッパリウマチ学会で提案された分類が用いられているのでそれを示す。

 

製造法によって、二つに分類。

・合成型(cDMARD)・・いわゆる低分子化合物

・生物学的製剤(bDMARD)・・抗体製剤

 

cDMARD はさらに分類する。

・従来型(csDMARD)

・分子標的型(tsDMARD)

抗リウマチ薬には、さまざまな種類があるが、基本的に共通する点は、

自己免疫疾患であるため、過剰な免疫反応を抑えることで、症状を抑える、という点である。

 

そのため、免疫抑制・調節作用があるため、

共通する有害事象として、感染症に注意が必要である。

 

◯感染が疑われる症状が出た時の対処方法

  発熱・のどの痛み

(例)症状が出たら、病院に連絡してください

 

◯感染予防

  予防接種をうける

  日頃の感染予防:歯磨き・うがい

メトトレキサート

◯メトトレキサート

 

メトトレキサートは、csDMARD に分類される。

現在、関節リウマチ治療の中心的な薬剤として使われている重要な薬剤である。

 

(薬理作用)

免疫反応に関わっている細胞は、細胞増殖が盛んである。

細胞増殖に欠かせない葉酸代謝を阻害するため、免疫反応を抑制する。

→過剰な免疫反応を抑えることで、関節リウマチの症状を鎮める

 

 

関節リウマチのためにメトトレキサートを使う場合、服用方法が非常に特徴的である。

週単位で服用する。

 

メトトレキサートを1〜2日目に服用し、その後休薬する。

メトトレキサートの最終投与の24〜48時間後に葉酸を服用する。

 

これは、メトトレキサートは葉酸代謝を阻害する薬であるので、矛盾するように見えるかもしれない。

この理由は、「過剰に阻害しすぎないように補う」ということであり、副作用対策として重要である。

 

メトトレキサートが高用量の時や、副作用対策が必要なときには、葉酸を併用することが推奨されている。

 

 

※医療安全の観点から

メトトレキサートの服用方法を間違う場合が稀にある。

このように週単位で服用する薬であるのが、

4週分の処方薬を、間違えて、4日間連続して服用したり、など。

正しく理解されているか、確認が重要である。

 

※葉酸サプリなども流通しているため注意(葉酸サプリをとる=薬の効果が低くなる)

(おまけ)

 

メトトレキサートは、

抗がん薬として使う場合と、抗リウマチ薬として使う場合

この二つに大別できる。

 

成分は全く同じだが、医薬品としては、

「メソトレキセート」・・・抗がん薬

「リウマトレックス」・・・抗リウマチ薬

の2種類がある。

医薬品は、保険適応が決められているので、メソトレキセートは、リウマチには使えない。

bDMARD

生物学的製剤は、

①TNF 阻害薬

②IL-6 阻害薬

③T細胞選択的共刺激調節薬

に分類できる。

 

①②炎症性サイトカインが、炎症反応を活性化させることを抑制する

③免疫の司令塔である T 細胞が、“自分を攻撃せよ”という指令を受け取らないようにする

 

原則として、メトトレキサートの効果が不十分なときや無効なときに使われる。

 

生物学的製剤が開発されたことで、メトトレキサート単剤の治療よりも、関節破壊の進行を抑えることができるようになった。

点滴や皮下注射(自己注射製剤)で投与される。

 

注意すべき副作用としては、感染症がある。

そのため、投与前に潜伏感染がないかの検査を行い、

投与期間中は感染症に注意が必要。

・感染対策

・定期的な検査:肺炎や血液検査等

 

<命名>

〜マブ

モノクローナル抗体製剤

標的の物質を認識する抗体

 

〜セプト

標的の物質と特異的に結合する受容体を利用した製剤

受容体に抗体のFc部位を結合させた、人工的な抗体のような形

分子標的薬

分子標的合成抗リウマチ薬

 

特定の標的分子に結合することで作用を発揮する低分子化合物で、

現在は、JAK 阻害薬が使われている。

 

ヤヌスキナーゼ(Janus kinase)阻害薬を JAK 阻害薬という。

JAK というタンパク質は、炎症などに関連する遺伝子発現を調節している。

 

特徴

・生物学的製剤と同様に、関節破壊の進行を抑えることが期待されている

・副作用も、生物学的製剤と同様に、感染症に注意が必要

・内服薬

 

<命名>

〜ib(イブ)

阻害薬(inhibitor)

(おまけ)

命名法

 

抗体医薬品

・モノクローナル抗体製剤

 monoclonal anti-body → -mab

 

受容体

 receptor → -cept