抗アレルギー薬(広義)とは、主に、Ⅰ型アレルギーによる症状を抑える薬のことをいう。つまり、対症療法薬にあたる。
◯Ⅰ型アレルギー
アレルギーに対して、IgE 抗体を産生する。IgE 抗体は、肥満細胞(マスト細胞)の表面に結合している。〔感作〕
次に、アレルゲンが侵入してくると、肥満細胞から、中に貯蔵している(または、合成した)ケミカルメディエーターと総称される物質が放出される。ケミカルメディエーターには、ヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサンA2 などの物質がある。
ケミカルメディエーターが、周辺の細胞に働きかけて、アレルギー反応を引き起こす。
花粉症は、Ⅰ型アレルギー反応の一つである。
また、花粉症では、夜間に鼻づまりが起こることがある。これは、遅発性アレルギー反応によるものであり、アレルギーの分類では、Ⅲ型アレルギーに該当する。
好酸球などから放出される、ロイコトリエンや血小板活性化因子(PAF)、好酸球顆粒タンパク(MBP)などの物質が関与している。
◯抗アレルギー薬
抗ヒスタミン薬・・ヒスタミンが受容体に結合するのを阻害することで、症状を抑える
ヒスタミン受容体のうち、H1 受容体に拮抗するのが、アレルギー症状を軽減する働きを持つ
(関連)H2 受容体・・胃酸分泌抑制
ケミカルメディエーター遊離抑制薬・・肥満細胞(マスト細胞)からケミカルメディエーターが放出されないようにする
・トロンボキサン関連薬
TXA2 合成阻害薬・・トロンボキサンA2 の合成を阻害する
TXA2 受容体拮抗薬・・トロンボキサンA2 が受容体に結合するのを防ぐ
・ロイコトリエン関連薬
LT 遊離抑制薬・・ロイコトリエンが放出されないようにする
LT 受容体拮抗薬・・ロイコトリエンが受容体に結合するのを防ぐ
抗アレルギー薬は、対症療法薬であり、治療の原則としては、アレルゲンの回避が重要である。
また、薬理作用の特徴から、ケミカルメディエーターが本格的に放出されきってしまう前に飲んだ方が効果的であることは想像できると思うが、初期療法(症状が軽いうちから治療を始める)ことが効果的である。
抗ヒスタミン薬の薬理作用
アレルギー反応は、異物から守るための生体の防御反応である。
感作が成立している状態で、アレルゲンが、肥満細胞の表面の IgE 抗体に結合すると、ケミカルメディエーターが放出される。
その中の一つ、ヒスタミンは、ヒスタミン受容体に結合する。H1 受容体がアレルギー反応に関連する。
・知覚神経を刺激すると、くしゃみなどが起こる。=くしゃみで異物を吹き飛ばしたい
・分泌を刺激して、鼻水がでる=鼻水で、粘膜の表面を洗い流したい
・血管を拡張させて、血管透過性が亢進する=血管内にある細胞が、作用部位に到達できるように
本来、右側に書いているような反応で、生体を守ることが目的であるが、それが過剰に起こると、花粉症となり、日常生活に支障をきたすため、対処が必要となる。
抗ヒスタミン薬は、H1 受容体に結合して、ヒスタミンの作用を阻害することで、薬理作用を示す。
体内では、ヒスタミンは、他にもいろんなところで作用している。
内耳の H1 受容体が刺激されると、嘔吐を引き起こす(乗り物酔い)。
→H1 受容体拮抗薬が、制吐薬や抗動揺病、抗めまい薬として使われている
中枢では、「覚醒」にも作用している。
胃では、ヒスタミンが、H2 受容体に結合することで、胃酸分泌を引き起こしている。
抗ヒスタミン薬の代表的な有害事象に、眠気がある。
ヒスタミンは、脳内で「覚醒」と関連している。
そのため、脳内のヒスタミン受容体を遮断すると、眠気が引き起こされる。
抗ヒスタミン薬は、第一世代と第二世代に分類される。
第一世代は、中枢に移行して作用するため、眠気などの、鎮静性の副作用が多く発現していた。
第二世代では、それが改善された。特に、非鎮静性に分類される薬剤では、眠気の副作用の発現頻度は極めて低い。
◯インペアードパフォーマンス
「眠気」とは自覚されなくても、気づかないうちに、集中力の低下を引き起こしている場合がある。これを、インペアードパフォーマンスという。
例えば、自動車のシミュレーションで正確に運転できているか、というようなテストで調べられている。
眠気まではなくても、インペアードパフォーマンスの副作用がないか、薬の開発段階で確かめられている。
〔対策〕
眠気の副作用が出た場合は、非鎮静性の第二世代抗ヒスタミン薬を選択する。
眠くても薬が効いているから、と我慢させるのは、適切ではない。
特に、職業上、自動車運転や機械作業、高所作業に従事している人では、注意が必要である。
眠気には、個人差も大きい。
なお、眠気と効果は相関しない。「眠い薬は効く、眠くない薬は効かない」というわけではない。
添付文書にも「自動車運転等の規制を伴う作業」に従事することについて、注意喚起があるものがある。
(1) 記載がない
(2) 注意するように
(3) 従事させないように
に分類できる。
(3) であっても、眠気ないという患者様もおり、やはり個人差は非常に大きい。
◯抗コリン作用
抗ヒスタミン薬の代表的な有害事象として、抗コリン作用もある。
アセチルコリン受容体にも作用してしまうため、抗コリン作用を引き起こす。
第一世代の抗ヒスタミン薬では、抗コリン作用が起こりやすいが、
第二世代の抗ヒスタミン薬では、抗コリン作用が問題となることは少ない。
高齢者では、口渇や、それからの食欲低下が起こることもあり、注意が必要である。
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