免疫には、「自然免疫」と「獲得免疫」があります。
自然免疫は、生まれつき体に備わっている仕組みで、異物を即時に排除するために重要です。
異物を貪食する、マクロファージや好中球などの食細胞が、中心的な役割を果たします。
獲得免疫とは、一度侵入した異物を覚えて、2回目以降に侵入してきた時に、異物に対応して、それを特異的に認識して排除する、後天的な仕組みです。
司令塔であるヘルパーT細胞は、異物の情報を食細胞から受け取って、細胞性免疫や液性免疫を活性化させます。
細胞性免疫は、細胞障害性 T 細胞などが、直接、異物を攻撃する仕組みです。
液性免疫は、B 細胞が活性化され、形質細胞に変換し、抗体を産生し、その抗体が異物からの防御に、重要な役割を果たします。
獲得免疫は、異物の情報を覚えて、対策を取るまで時間がかかりますが、異物の情報を一度覚えたら、記憶する点が、非常に特徴的です。
この免疫記憶の性質を利用したのが、ワクチンです。
ワクチンの性質として、
・自らは病原性は持たないが
・免疫を引き起こしてヒトの体内で記憶させる(免疫原性)
のが、理想的です。
従来使われているワクチンは、
・生ワクチン
・不活化ワクチン
・トキソイド
・抗毒素
に分類されます。
◯生ワクチン
生ワクチンは、ワクチンを継代培養することで弱毒化させたものです。
「免疫原性は強い」が、「病原性が(弱いとはいえ)ある」という特徴があります。
免疫原性は強いですが、他のワクチンに比べると、病原性があるところは、短所です。
免疫不全状態の人に打つと、病気を引き起こすため、禁忌とされてきました。
(※ただし、免疫状態が落ち着いている場合は、予防接種によって得られる効果が大きいため、生ワクチンを接種する場合もあります。)
◯不活化ワクチン
不活化ワクチンは、ウイルスを熱処理や薬品処理することで、無毒化したものです。
免疫原性は、生ワクチンには劣りますが、中程度はあり、
病原性は無毒化されている、という特徴があります。
免疫原性は、中程度であるため、十分な免疫を得るためには、複数回の接種が必要な場合があります。
不活化ワクチンの代表例には、インフルエンザワクチンがあります。
◯トキソイド
トキソイドは、ウイルスの毒素を無毒化したものです。
不活化ワクチンに分類されることもあります。
病原性は無毒化されており、免疫原性も中程度です。
トキソイドの代表例には、ジフテリア・破傷風があります。
◯抗毒素
抗毒素は、細菌が産生する毒素やトキソイドを、少量ずつウマに投与して、毒素を中和する抗体を産生させ、ウマ血清から、その中和抗体を精製した免疫グロブリン製剤です。
ガス壊疽、ジフテリアや、マムシ・ハブの咬傷の治療に使われます。
従来のワクチンは、上記の通りですが、
新型コロナウイルスワクチンでは、それ以外のワクチンを、耳にしたと思います。
基本的なワクチンの仕組みは、この通りです。
①ウイルスの遺伝情報を注射する
②ヒトの体内でタンパク質に変換される
③タンパク質の情報を覚えて、抗体が産生される
ウイルスが持つ遺伝子情報は、DNA か RNA に大別されます。
次に、遺伝子情報を、ワクチンとして注射するときに、どのような箱に入れているか、
遺伝情報と箱の種類によって、いくつかに分類されます。
mRNA ワクチン
ウイルスの外殻のタンパク質の元となる mRNA を油のカプセルに閉じ込めたもの
DNA ワクチン
抗原タンパク質の元となる DNA を注射するもの
体内で、DNA → mRNA →タンパク質と変換され、抗原抗体反応を引き起こす
ウイルスベクターワクチン
抗原タンパク質の元となる DNA を、ヒトにとって無害(または毒性が極めて低い)運び屋のベクターに入れたもの
組換えタンパクワクチン
抗原タンパク質を単離・精製したワクチン
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