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【補足】1-2 医薬品の名前

第1章 薬理学を学ぶにあたって


医療用医薬品には、二つの名前がある

医療用医薬品には、

・製品名・・・製薬会社が決めた製品名(独自の銘柄名)

・一般名・・・有効成分(化合物)の名前

という二つの名前があります。

 

例えると、絆創膏とバンドエイドの関係のようなものです。

「絆創膏」は製品の特徴を定義づけるような一般名で

企業が独自に命名し、商標登録を取っているブランド名にあたるのが、「バンドエイド」や「カットバン」「リバテープ」のようなものです。

 

一般名は、非常に長いので、覚えづらいと感じる人も多いでしょう。

例えば、「ロキソプロフェンナトリウム水和物」は、薬効を発揮する中心の骨格は「ロキソプロフェン」で、これに「ナトリウム」や「水」が結合したものです。「ロキソプロフェン」を覚えることが大切です。

授業の資料では、中心となる骨格は、フォントを大きく表示しています。フォントの大きい部分を覚えることが大切です。

また、授業スライドでは、製品名(商品名)には、登録商標 (R) をつけています。


「薬品名」「剤型」「規格」を確認する

名前を見て、一つの医薬品を特定するために、確認すべきポイントは、

「薬品名」「剤型」「規格」の3つのポイントです。

 

「薬品名」

ただし、類似名称には注意が必要です。

過去にも、最初の二文字が共通する医薬品を間違ってしまう医療事故も発生しています。

このとき、薬効も併せて覚えておくことは、医療ミスの防止にも役立つと思います。

 

「剤型」

錠剤やカプセルなど、同じ薬品名でも異なる剤型が開発されているものもあります。

 

「規格」

成分量も複数の規格がある医薬品も存在します。

 

ミスを防ぐために、医療機関によっては、薬品棚に「複数規格あり注意」などの表示をつけているところもあります。


アルファベットにも注意

また、医薬品を特定するときは、名前の語尾についたアルファベットにも注意が必要です。

 

(例)

・リンデロン点眼・点耳・点鼻液

・点眼・点鼻用リンデロンA液

 

この二つは、A がついているか、いないかで、含有成分が異なります。

(もちろん、点耳用に保険適応がないので、点耳できないという点も違います)

 

・リンデロン点眼・点耳・点鼻液・・・ベタメタゾン【副腎皮質ステロイド】

・点眼・点鼻用リンデロンA液・・・ベタメタゾン【副腎皮質ステロイド】+フラジオマイシン【抗菌薬】

 

このように、アルファベットまで確認することが大切です。

 

アルファベットの有無で、成分が異なるものには、以下のようなものがあります。

・外用副腎皮質ステロイド・・アルファベットが抗菌薬の有無を示す

・乳酸菌・・Rがついているのは「耐性(resisitant)菌」

・輸液・・アルファベットが糖の種類を示す


他にも、医薬品を特定するために注意すべきアルファベットとして、製剤の特徴を示すものがあります。

 

CR, controlled release 放出制御

S, sustained 持続放出

SR, slow release 持続放出

L, long 長時間作用型

LA, long acting 長時間作用型

TR, time release 持続放出

R, retard 遅らせる

 

簡単にまとめると、どれも、ゆっくり溶け出して、長く効く製剤です。

 

つまり、「錠」と「CR錠」は、全く別物と思ってください。

 

後述しますが、このように特殊な工夫がされた製剤の取り扱いで注意してほしいことがもう一点。分割・粉砕できないという点です。


他にも、成分量を示す場合があります。

 

複数の薬効成分を含有している配合錠では、成分量を示すために、アルファベットや番号が使われます。ですので、それも間違っていないか、確認することが大切です。

 

LD, low dose 低用量

HD, high dose 高用量

 

1番

2番

3番

4番

など。

 

実際の含有量は製剤ごとに違いますが、用量が少ないものが、番号も小さいです。


後発医薬品の命名ルール

医薬品には、二つの名前があると説明しました。

 

先発医薬品では、独自のブランド名である製品名(商品名)と一般名(成分の名前)とは、別の名前が付けられています。

(ちなみに、製品名には、独自の由来が興味深かったりします)

 

後発医薬品は、一般名を使うように、と定められています。その代わりに会社名が最後に付けられています。

①薬品名、②剤型、③規格、④「会社名」

なので、後発医薬品は、会社名まで読んで、一つの医薬品を特定することが必要です。

 

なお、このルールが作られる前には、後発医薬品にも独自のブランド名が付けられていました。随時変更されつつありますが、名残があるかもしれません。


製品名と一般名、どちらを覚えないといけませんか?ということを質問されることがあります。

 

正直な回答としては、

「両方必要です」ということです。

 

国家試験では、一般名が用いられるのですが、

実臨床では、先発医薬品は商品名で扱われるし、

後発医薬品は、一般名で取り扱うので

両方必要になります。

 

ただし、一般名は、名称に特徴があります。

薬効群で共通の命名ルールがある場合があります。

語尾が「〜スタチン」「〜サルタン」「〜ol」など。

わかりやすい命名については、授業でも紹介します。

 

なお、授業スライドでは、製品名と一般名は併記しています。


さらに、注射液に関しては、ラベルにいろんな情報が掲載されているので、紹介しておきます。

注射液は、直接、血管内に薬物を注入するなど、効果が早い反面、副作用も早い投与経路です。また、投与経路毎に注入できる薬液の特徴も異なります(懸濁液も注入できる、等張液でないと注入できない、など)。そのため、ラベルには、医療ミスを防ぐためにも重要な情報が掲載されています。

注射薬は、医療ミスの起こりやすい剤型でもあります(慌てる状況で使う剤型であることも、要因ですが)。

 

①副片

ラベルの一部を切り取ることができるものがあります。

例えば、アンプルやバイアルから、注射筒に薬液を吸い取ってしまうと、注射筒だけをみても、何が入っているかわかりません。そのため、副片を切り取って、注射筒に貼付することで、中身がわかるので、医療ミスの防止に役立ちます。

※副片がない製剤の場合は、アンプルをゴムで括るなど、医療機関毎に内規があると思います。

 

②投与経路

薬液によっては、投与経路が指定されています。

 

「静」「静注」「静注用」→静注用注射(ワンショット)

「点滴」「点滴専用」→点滴静注用注射 ※「静」とは書きません!

「他」「その他」→具体的に表示していない施用部位があるので、添付文書で確認

「特」「特殊」→特殊な施用部位なので、添付文書で確認

など

 

③希釈液

「生食・5%ブドウ糖液で希釈」など、希釈液に指定がある場合は、ラベルに記載されています。

また、製剤によっては、指定の希釈液が添付されている場合があります。

 

指定の希釈液を使わない場合、

・有効成分が失活する(効果がなくなる)

・有効成分が沈澱する(投与できなくなる)

などの影響が出てきます。指定がある場合、正しいものを使用することが大切です。

 

④投与速度など

カリウム製剤には「薄めて点滴」と書いているように、投与するときの注意点が書かれているものもあります。

 

⑤その他

「禁〇〇」など、禁止事項を赤字で大きく書いている製剤もある など


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授業の補足資料 1
1-1 から 1-4 までの図表
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