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【補足】1-1 医薬品とは?

第1章 薬理学を学ぶにあたって

医薬品とは?

「医薬品」とは、法律で、定義されています。

 

その「法律」は、正式名称は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」で医薬品医療機器等法とも言われます。略称として、「薬機法」と呼ばれます。

以前は、「薬事法」と呼ばれていました。違法な薬物の取引などのニュースで、「薬事法違反」などという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

2014年の法改正で、「薬機法」という名称に変わりました。

 

薬機法の第2条に定義があります。

「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されるものが目的とされているもの」と定義されています。

人の治療だけでなく、

・人又は動物の疾病を対象としたもの

治療だけでなく

・診断

・治療

・予防

が目的である、と定義されています。

 

診断目的の検査薬(造影剤など)や人の疾病を予防するための害虫の駆除薬(殺鼠剤など)も薬です。


医薬品は、大きく2種類に分けることができます。

病院などで使う医療用医薬品と、

薬局・ドラッグストアなどで購入する、いわゆる市販薬です。


病院や診療所で、

・処置に使う薬

・処方せんを発行して使う薬

のことを、「医療用医薬品」と言います。

 

これは、「医師・歯科医師」が使用するもの、医師・歯科医師が発行する処方せん指示に基づいて使用される薬のことをいいます。

 

医療用医薬品を、さらに細かく分けると、

・使用にあたり処方せんが必要な「処方箋医薬品」と

・それ以外

に分けられます。

 

次にあげる、いわゆる市販薬と比較すると、

薬の効果も高いですが、使用にあたり安全管理が重要な薬であるといえます。

 

指示がないと勝手につかうことはできません。


次に、いわゆる市販薬です。

これは、「一般用医薬品」といい、薬局・薬店・ドラッグストアで、購入して使う薬のことです。一般の人が、薬局等で購入し、自らの判断で使用する医薬品のことを言います。

医療用医薬品と比較すると、効果は弱めですが、安全性は確保されている薬といえます。

 

売薬(うりぐすり)と呼ぶ人もいます。

カウンター越しに販売される薬という意味で、「OTC医薬品」とも呼ばれます。

薬剤師は、「OTC」と呼んでいる人がほとんどだと思います。

 

また、「要指導医薬品」という区分も新しくできました。

これは、医療用医薬品に準じたカテゴリーといえます。

一般用医薬品の中に、要指導医薬品が含まれると誤解されがちですが、法律上では別の区分になります。


一般用医薬品は、さらにリスク区分によって、分類されています。

第一類医薬品

指定第二類医薬品

第二類医薬品

第三類医薬品

 

効き目の強さというわけではなく、リスク区分によって分類されています。さらに、この分類ごとに、販売のルールが定められています。

例えば、対応する専門家、情報提供、販売記録の保存、陳列方法、販売方法など。

 

ドラッグストアやスーパーの医薬品コーナーが、夜に行くと閉められているという経験はありませんか?

カウンターの後ろにしか薬が並んでいなかったり、陳列棚に空箱がおいてあったり。

その元となっているのが、これです。

 

要指導医薬品が最も安全管理が重要な薬であり、比較的危険性が低いものへと区分されており、第三類医薬品が、最も安全性が確保されている区分です。

 

この区分は、一度決まったらそのまま、ではなく、定期的に変更もされています。


医療用医薬品、一般用医薬品の区分も、定期的に見直されます。

 

「医療用医薬品」として承認された薬が、販売後月日が経過し、使用経験が蓄積される中で、

・比較的、副作用が少ない

・安全性が高い

と認められた薬は、市販されるようになる場合があります。

 

「医療用医薬品」から「一般用医薬品」に変更、スイッチした薬

という意味で

スイッチ OTC と呼ばれます。

 

スイッチ OTC は、まず、「要指導医薬品」に分類されます。その後、安全性に応じて、「一般用医薬品」に分類されていきます。

 

医療用医薬品と一般用医薬品に、同じ名前の製品があるのを目にしたことはありませんか?

それは、スイッチ OTC です。

薬の有効成分は同じです。

(※添加物(製剤化するときに必要な固める成分や型抜きしやすくする成分など)は違う可能性があります。)

 

関連するものとして、(資料にはあげていませんが)

「ダイレクト OTC」というものもあります。

これは、医療用医薬品として使用経験がないものが、一般用医薬品として承認されたものです。

 

類似する成分がすでに医療用医薬品として販売されているため、医療用として多大な労力をかけて製剤の開発をするよりも、安全性が高いので、一般用医薬品として承認を得る方がメリットがある、との製薬企業の判断によるものと思われます。


また、薬機法で規定しているものは、医薬品だけではありません。

 

「医薬部外品」

人体に対する作用が緩和なもので、機械器具等ではないものをいいます。

「防止・衛生」を目的とする有効成分を含んでいるもので、パッケージには、「医薬部外品」と記載されています。(※決められた目的のいずれかに該当するもの)

栄養ドリンクや制汗スプレー、いわゆる薬用化粧品、殺虫剤・殺鼠剤などがあります。

 

「医療機器」

病気の診断、予防、治療に用いられる機械機器を言います。

 医療機器は、メスやピンセットのような小物類から、体内に植え込む治療用の心臓ペースメーカ、CTやレントゲン装置、放射線治療装置などの大型のものまで、多種多様です。 身近な医療機器には、コンタクトレンズ、救急絆創膏、体温計や電子血圧計、家庭用マッサージ器などがあります。

 

「化粧品」

人体に対する作用が緩和なもので、皮膚、髪、爪の手入れや保護、着色、賦香を目的として用いられるものを言います。

 

化粧品の中には、裏面に「医薬部外品」と書いてあるものがあります。

これは、いわゆる「薬用化粧品」で、分類としては、「医薬部外品」です。

医薬部外品は、「Aという成分を一定濃度含んでいる場合、Bという効能・効果を表示しても良い」と認可された成分を含んでいます。

化粧品が表示できる効能・効果は、さらに限定的です。

 

大切なことは、効能・効果を謳うことができるのは、薬機法で規定されている、医薬品、医薬部外品、医療機器、化粧品だけ、です。

いわゆる健康食品は、「食品」であり、効能・効果を謳うことはできません。

 

よく見てみてください。

「高血圧」に効く、とは書いていないはずです。

「血圧が気になる方へ」などという書き方がしてあると思います。

 

 

また、効能・効果だけでなく、品質保持や販売などについても、法律で定めされています。

医薬品や医薬部外品を販売するには、販売業の許可が必要です。

時々、(本当にごくまれに)

医薬品や医薬部外品が、ネットオークションやフリーマケットで販売されていることがあります。

これは、違法な行為です!!


次に、食品のことについても、触れておこうと思います。

 

「特定用途食品」

特別用途食品(特定保健用食品を除く)は、乳児の発育や、妊産婦、授乳婦、えん下困難者、病者などの健康の保持・回復などに適するという特別の用途について表示を行う食品です。

消費者庁長官の許可を受けた上で、表示をつけ、販売することができます。

 

機能性をうたうことができる食品としては、「機能性表示食品」「特定保健用食品」「栄養機能食品」があります。

機能性をうたう、というのは、健康の維持・増進に役立つという表示をすることができる、ということです。

「おなかの調子を整えます」「脂肪の吸収をおだやかにします」など、特定の目的が期待できるという表示をすることができます。

 

疾病を治すわけではありません。ですので、

・疾病に罹患していない人

・成人

・妊産婦(妊娠を計画している人も)、授乳婦ではない人

が使うことを前提としています。

 

「特定保健用食品(トクホ)」

健康の維持増進に役立つことが、科学的根拠に基づいて認められ、表示が許可されている食品です。

表示されている効果や安全性については、国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可しています。【許可制】

 

「機能性表示食品」

事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。

販売前に安全性・機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官に届けられたものです。【届出性】

トクホと異なり、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではありません。

 

「栄養機能食品」

1日に必要な栄養成分が不足しがちな場合、その補給・保管のために利用できる食品です。

すでに科学的根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含む食品であれば、特に届出などしなくても、国が定めた表現によって、機能性を表示することができます。

(例)

・栄養成分:ビタミンC

・栄養機能表示:ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持つ栄養素です。

・注意喚起表示:本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。1日の摂取目安量を守ってください。

 

 

 大切なこと

・疾病の治療につかうと表示できるのは、医薬品だけ

・機能性を表示している食品も、きちんと制度を守って表示している

・いわゆる健康食品はあくまでも「食品」

 →効能・効果をうたっている健康食品は、怪しんで

 →患者さんから健康食品の相談をされた場合、相談するように伝えて!

   ・疾患の治療に影響する可能性がある(健康食品が原因の肝機能障害など)

   ・治療薬と相互作用がある可能性がある


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授業補足資料 1
1-1 から 1-4 までの図表
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