薬と食品などの相互作用について
国家試験でもよく取り上げられるような主要なものを解説します。
実際には、薬と食品の相互作用はこの他にもあります。(編集中)
ワルファリンと納豆・緑黄色野菜
ワルファリン〔抗凝固薬〕‥血栓・塞栓症の予防のために用いられる
作用機序:ビタミンKと拮抗して、血液凝固因子の活性化を阻害することで、血栓を予防する
→ビタミンK とは反対の作用
→食事などで、ビタミンK摂取量が急増すると、ワルファリンの効果が減弱する
※相互作用の機序としては、「薬力学的相互作用」にあたる‥血中濃度を変動させるのではなく、作用部位で相互作用を起こす
◯ビタミン K ‥天然型には、ビタミン K1 とビタミン K2 の2種類がある
生理作用)骨を強くする、血液凝固
①納豆・クロレラ・青汁
ビタミン K 含有量が多いため、ワルファリン服用中は禁止
※納豆には、ビタミン K 合成酵素も含まれているため、特に禁止
②ビタミン K 製剤 ※ワルファリンと併用禁忌
・グラケー‥骨粗鬆症治療薬
・ケイツーシロップ‥乳児のビタミン K 欠乏性出血症の治療 ※新生児マススクリーニング
③緑黄色野菜
色の濃い野菜は、ビタミン K 含有量も多い
摂取しすぎがビタミン K 摂取しすぎにもなるため、変動を少なくする
小鉢1杯程度にする
薬とハーブ
◯セント・ジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)
ヨーロッパで伝統医学として使われてきた。更年期症状や気分の落ち込みに対して、使われている。
ハーブティーとしてだけではなく、サプリメントとしても、販売されており、広く流通している。
(スーパーやドラッグストアでもよく見かけると思います。買い物の時に気がけて見てみてください。)
◯薬との関係
セント・ジョーンズワートは、薬物代謝酵素であるチトクロム P 450、中でも、CYP3A4、CYP1A2 を誘導する。〔「酵素誘導」という〕
→CYP3A4、CYP1A2 が増える
→ CYP3A4、CYP1A2 で代謝される薬物について、代謝される量が増える
◯酵素誘導について(図の説明)
酵素は工場に例えられる。原料を加工して製品をつくる。
工場がある場所が、「肝臓」。
酵素誘導作用のある薬物を使うと、
・酵素(タンパク質)を発現させよ、という命令がでる
・酵素がたくさん増える
・工場での処理能力が増える
・沢山の原料を使って、製品を作る
→酵素誘導がないときと比較して、
・原料:少ない
・製品:増える
酵素によって代謝される薬物A=原料
酵素誘導を起こす薬物B
薬物Aと薬物Bを併用すると、体内の薬物Aが少なくなる
→薬物Aの薬効減少
◯相互作用の機序
この相互作用の機序を分類すると、「薬物動態学的相互作用」となる。
<ポイント>
・薬力学的相互作用‥血中濃度には影響しない。作用部位で相互作用を起こす。
・薬物動態学的相互作用‥相互作用によって、血中濃度が変化することで、相互作用の影響を及ぼす。
※この例は、「薬物代謝過程における薬物動態学的相互作用」となる。
◯薬によっては、セントジョーンズワートと併用禁忌の薬がある
CYP3A4 は、薬物代謝酵素の中でも、薬物代謝に多く関与している
→いろんな薬物に相互作用を及ぼしてしまう
(例)
・免疫抑制薬:タクロリムス・シクロスポリン
・血液凝固薬:ワルファリン
・抗 HIV 薬:インジナビル
・抗不整脈薬:ジソピラミド・アンカロン
・強心薬:ジゴキシン
・抗てんかん薬:カルバマゼピン・フェノバルビタール
・気管支拡張薬:テオフィリン
上記に挙げた薬剤は、「ハイリスク薬」(有効治療域が狭い)
この相互作用では、薬物の血中濃度を下げる。
つまり、薬物の治療域が狭い薬物では、相互作用の影響が著名に現れるため、特に注意が必要である。
◯対策
治療効果が得られているか→治療効果モニタリング項目の確認
薬物血中濃度は十分か→TDM
※特に、抗 HIV 薬の場合、
血中濃度の低下=ウイルスが耐性化する=薬が聞かないウイルスが出現する
ため、確実に服薬することが重要であり、併用薬・サプリメントに十分に注意が必要である。
抗菌薬と牛乳
◯抗菌薬
抗菌薬の中でも、テトラサイクリン系抗菌薬とニューキノロン系抗菌薬が、この相互作用を受ける。
◯金属イオンとの反応
テトラサイクリン系抗菌薬とニューキノロン系抗菌薬(以下、「抗菌薬」とのみ記載している)は、金属イオンと結合して、錯体を形成し、吸収されにくくなる。
抗菌薬と金属イオンを同時に摂取すると、消化管の中で両者が出会い、結合する。
その結果、抗菌薬が吸収されにくくなるため、血中濃度が低下する。
◯金属イオン
特に、2価の陽イオンに注意が必要。(水に溶解して、2+ の電荷を持つ)
鉄・カルシウム・マグネシウムに加えて、アルミニウムも相互作用を起こす(Al3+ だが相互作用が起こる)ので、注意が必要。
食品の場合
・牛乳(カルシウムを含む)
薬剤の場合
・健胃消化薬(〇〇胃酸など)
・胃酸を中和する胃薬
・緩下剤‥酸化マグネシウム(カマグ)
◯対策
両者が消化管内で出会わないようにする
→服用タイミングをずらす
抗菌薬→(2時間)→金属
金属→(4時間)→抗菌薬
※金属イオンを先に服用すると、2時間では不十分だと言われている。
アルコールと薬
アルコールと薬の相互作用はいくつか存在する。
向精神薬とアルコール
アルコールは薬理学的に、「中枢抑制薬」にあたる。
したがって、同様の薬理作用を有する薬物(睡眠薬、抗てんかん薬、抗不安薬、抗精神病薬など)と併用すると、中枢神経抑制作用が増強する可能性がある。
〔注釈〕アルコールを飲んで、「暴れる」人がいるので、「抑制」ではないように感じるかもしれませんが、それは、「抑制の抑制」=「脱抑制」のため。
他にも、抗ヒスタミン薬では、副作用として「眠気・インペアードパフォーマンス」があるように、中枢抑制的にも作用するので、併用すると増強する可能性がある。
◯相互作用の機序
「薬力学的相互作用」にあたる
薬物動態学的相互作用
アルコール常飲者では、薬物代謝酵素が増加する。
・薬物の血中濃度が減少 →効果が減少
・代謝物が増加 →毒性の高い代謝物がある場合、毒性が増強
(例)アセトアミノフェンとアルコール
→毒性の高い代謝物への代謝が促進される →肝障害
ジスルフィラム作用のある薬とアルコールの併用
・ジスルフィラムとは、アルコール中毒の治療に用いられる嫌酒薬
・アルコール代謝を阻害し、「悪酔い」の原因物質(アセトアルデヒド)が消失しないため、悪酔い状態になる
ジスルフィラム作用のある薬
(代表例)セファロスポリン系抗菌薬の一部 他に、SU 薬、抗原虫薬など
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