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薬剤性不随意運動

副作用としての「不随意運動」

 

<基本的な発生機序>

運動は、

①錐体路:大脳の命令を、運動神経が骨格筋に伝えて制御している

②錐体外路:黒質線条体系のドパミン神経系が、細かい運動を調節している

この二つが協調して、連携することで、スムーズに動いている。

 

錐体外路系が障害されることで起こるさまざまな症状を、「錐体外路症状」という。

錐体外路症状には、動きが悪くなる「寡動症状」と動きが盛んになる「不随意運動」症状がある。

錐体外路症状には、ドパミン神経系が関与している。

例えば、パーキンソン病では、ドパミン神経の変性のため、黒質線条体系のドパミンが枯渇することで、

筋固縮‥筋肉が強張る

無動‥動きが鈍くなる

◯姿勢反射障害‥身体のバランスがとりにくくなる

という寡動症状と、

静止時振戦‥手足が震える

という不随意運動症状が現れます。 (※◎は三大主徴)

 

ドパミン神経系に作用する薬物の影響で、錐体外路症状が現れる場合があります。

 

ドパミン神経系は、脳内でいくつかの働きがあり、

他の病気の治療の目的で、ドパミン神経系の働きを抑制する薬を使用したときに、

運動系のドパミン神経系も抑制されてしまうため、副作用が起こるためです。

 

ただし、これは、ドパミン遮断作用の薬理作用から、起こることが予測できる副作用であるため、特に、リスクが高い人においては、初発症状を確認することが重要です。

 

抗精神病薬

要因:長期間服用・高齢者・高用量など

副作用としての不随意運動の機序をまとめます ※これは詳しすぎるので、不要

 

<ドパミン神経>

◯中枢のドパミン神経系・・・脳のドパミン神経には、4つの主な経路がある

 ・中脳辺縁系(腹側被蓋野から側坐核に投射している経路)‥統合失調症の陽性症状や依存に関与

 ・中脳皮質系(腹側被蓋野から大脳皮質に投射している経路)‥陰性症状や認知症状に関与

 ・黒質線条体系(黒質から線条体に投射している経路)‥錐体外路症状に関与

 ・漏斗下垂体系(視床下部から下垂体に投射している経路)‥乳汁分泌や性機能障害に関与

 

◯ドパミン神経系の作用・・・中枢神経以外にも、ドパミンが関与している

 ・中枢:延髄の CTZ(化学受容器)‥嘔吐に関与 (ドパミンD2受容体を刺激=嘔吐)

 ・末梢:消化管は副交感神経に刺激されて(神経終末から ACh 放出)で、消化管運動が亢進し、消化液分泌も亢進する

   ドパミンは、このアセチルコリン ACh の作用を抑えている

    (ドパミン D2 受容体を刺激→ACh↓→消化管運動抑制

 

→治療目的以外のところに作用する

=副作用の原因になる(ただし、高頻度で起こるが、起こるだろう予想できるので、初期症状を確認して、早く発見して対処することが重要)☆☆☆

 

 

 <ポイントとなる薬>

抗精神病薬(特に、定型抗精神病薬

・中脳辺縁系のドパミン神経において、ドパミンが過剰に放出されている状態→陽性症状

・【治療効果】ドパミン D2 受容体を阻害する→陽性症状を抑制する

・【薬理作用に基づく副作用】中脳皮質系のドパミンも遮断することで、錐体外路症状が出現する☆☆☆

 

 

<錐体外路症状とは?>

・錐体外路とは‥錐体路以外の運動調節経路、”細かい動きを調節する、不随意的”

  錐体外路が障害されると‥振戦(震え)、筋硬直

・錐体路とは‥大脳皮質の運動中枢から脊髄に伝える経路。(例)腕を動かそうとして、動かす場合

  錐体路が障害されると‥運動麻痺、筋力低下

 

錐体外路症状を2つに大別すると、

・動きが増える‥ジスキネジア、アカシジア、ジストニア

・動きが減る‥パーキンソニズム

 

 

<なぜ、制吐薬や胃腸薬で錐体外路症状がでるのか?>

メトクロプラミド(プリンペラン)【制吐薬】

・【治療効果】ドパミン D2 受容体遮断作用→CTZ 刺激を抑える→制吐作用

・【治療効果】ドパミン D2 受容体遮断作用→副交感神経からの ACh 放出を抑える→胃腸の動きを抑える

・【薬理作用に基づく副作用】メトクロプラミドは、BBB を通過しやすい

  →中枢でドパミンを抑える→錐体外路症状、乳汁分泌異常・内分泌異常など

 

制吐薬としてよく使われる2大ドパミン D2 遮断薬の違い

・メトクロプラミド(プリンペラン)

・ドンペリドン(ナウゼリン)

  BBB 通過性‥メトクロプラミドのほうが、通過しやすい 

  (※CTZ には BBB ないため、BBB 通過しにくいドンペリドンにも、制吐効果はある)

  →使い分け

    授乳中には、ドンペリドン

    高齢者は、錐体外路症状リスクを考慮して、長期間漫然投与はしない

      メトクロプラミドの方が良いが、長期投与・高齢者では、錐体外路症状に注意は必要

      (高齢者では中枢は感受性が増大するため、中枢の副作用がでやすい☆☆☆)